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温暖化に続きコロナでもダイキンの空調に追い風、時価総額5兆円目前

 世界で空調事業を展開するダイキン工業の株式時価総額が5兆円に迫ってきた。地球温暖化で空調の必要性が高まっているところに、新型コロナウイルスの感染対策で換気機能が期待される同社のエアコンが熱い視線を浴びている。
 
 東証1部機械セクターの時価総額トップであるダイキンの株価は6月9日、終値での上場来高値となる1万6950円を付けた。19日時点の時価総額は4兆8569億円で、東京証券取引所の1部上場銘柄の中で三井住友フィナンシャルグループやファナックを上回り19位。設備投資関連業種(電機・機械・精密機器)ではキーエンスとソニーに次いで3位だ。
 
 株価の上昇に弾みがつき始めたのは5月12日の決算発表後。野村証券の前川健太郎アナリストは、新型コロナがもたらす長期的な影響でプラスなこととして空調関連での空気質、換気、抗菌、除菌、安全安心への顧客ニーズの高まりを挙げた上で、ダイキンが翌13日の電話会議で「こうした変化に積極的に対応していくことが示されたのはポジティブな印象」と6月5日付リポートで評価する。
 
 新型コロナウイルスの感染拡大で消費者は空気の質に敏感になった。感染を防ぐため換気の重要性が叫ばれる中、国内で唯一、外気を取り込んで換気をしながら冷房ができる壁掛形の家庭用エアコンが同社の「うるさらX」だ。ダイキン広報担当者は、決算後に一部の機種で外気を取り込む機能があるとテレビコマーシャルや家電量販店の売り場で伝え始めたと説明。それ以来、暑さも手伝って需要が伸び手ごたえを感じているという。
 
 夏本番を前に早くもエアコンの売れ行きは好調だ。家電量販店のコジマでは5月のエアコンの売上高が前年同月を7.1%上回った。東海東京調査センターの石野雅彦アナリストは「テレワークで家にいる時間も長くなり、定額給付金が届いていなくても買おうという流れなのではないか」との見方を示す。
 
 エアコンと併せて空気清浄機を手がけていることもダイキンの強み。同社の空気清浄機には花粉やウイルスを分解するストリーマ技術(プラズマ放電技術)を採用している。ブルームバーグ・インテリジェンスの北浦岳志アナリストは「今後は空気質改善技術を搭載した空調のニーズが⾼まるとみられ、同社製品の⻑期的な強みになる可能性がある」とみる。

 ダイキンの広報担当は「同技術は10年ほど前からうるさらXに搭載されている」とした上で、うるさらXは「空気清浄機ほど空気をきれいにできるわけではない。空気を外に出すことはできない」ことから室内の換気システムの併用などを呼びかける。
 
世界で1秒に10台
 国際エネルギー機関(IEA)では、2050年までに世界で1秒に10台のエアコンが売れると試算している。ダイキンの空調事業の売上高は世界一で、世界の生産拠点は100以上、製品販売国は150を超える。地産地消が進んでいることが最大の強みとみる東海東京調査の石野氏は「世界各国で生産販売を行っている国際競争力のある日本企業という点で、トヨタ自動車と並んで非常に珍しい会社」と位置付ける。今回のコロナ禍では移動制限などが緩和されるといち早く各国で生産し販売を再開できた。
 
 世界に先んじて経済が回復に転じた中国で稼いでいることもダイキンのセールスポイント。石野氏は空調事業の中国の利益率を25%と推測する。中国の購買担当者指数(PMI)は製造業、非製造業とも3月に活動拡大・縮小の節目となる50を上回った。6月の指標で回復の巡航速度が確認できれば「同社を含めた中国関連株への期待を後押しする可能性がある」と楽天証券経済研究所の窪田真之チーフ・ストラテジストはみている。
 
 ダイキンによると、国内空調シェアは家庭用が18%で2位、業務用は1位で40%。窪田氏は、日立製作所や東芝などが家庭用の小型エアコンを製造する一方、ダイキンは容量が大きく埋め込み型の業務用エアコンを主に展開していたことに触れ、時代の流れとともに容量の大きいパワーがある製品が家庭用でも求められるようになり、ダイキンが独り勝ちするようになってきたと語った。
 
 窪田氏は、ファンドマネジャーだったころに「機械株全体がダメな時はダイキンを買えとよく言われた」と振り返る。現在も企業の設備投資が回復して機械を作る工作機械の需要が高まっている状況ではなく、機械セクター全体が買われていくのは工作機械受注の回復を確認してからになりそうだとし、ダイキンが相対的に買われていると説明する。19日時点の年初来騰落率はTOPIXがマイナス8.1%、東証1部機械指数がマイナス7.3%であるのに対し、ダイキンはプラス7.3%だ。
 
 ダイキンの21年3月期業績計画は売上高2兆3300億円、営業利益1500億円。現行の中期経営計画で掲げる2兆9000億円、3480億円を大きく下回る。東海東京調査の石野氏は「アフターコロナの世界でこれからどのように軌道修正するのか」に注目している。

更新日:2020年06月21日

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